2013年1月4日金曜日

久則さんのお年玉・・・・・オオコノハズク


 原宿駅前に積雲画廊という小さなギャラリーがあります。もう随分昔のことですが、その年の正月は漫画家岩本久則氏の個展があったので、チョッと覗きに足を運んでみました。期待はしていなかったのですが、幸運にもちょうど画廊に顔を出した久則さんにお会いすることができ、予想だにしていなかった貴重な鳥情報をいただきました。「新宿御苑のオオコノハズクは見てきたの?」「えっ、知りません」こんなやりとりだったと記憶しています。もちろん双眼鏡も持参していなかったのですが、「きっと誰かが見に来ているから、覗かせてもらいなさい」久則さんは、わざわざ封筒の裏にオオコノハズクがいるという樹の場所までの地図を書いて下さいました。

 現地に到着すると、スコープでオオコノハズクを観察されている方が一名・・・・だったような。このレベルの鳥の出現にしては随分静かな状態です。近年のようにネット環境が発達していないのが幸いしたのでしょう。

 当のオオコノハズクといえば、やはり夜行性の鳥だけあって、木の洞のなかで時折薄目を開ける程度、眼の色を確認するのもやっとでした。

 鳥との出会いが人との出会いと関連した思い出になっているということは、何と幸せなことでしょうか。 その日の久則さんの作品の記憶が今では殆ど無いというのは内緒ですが・・・ (西区 柳場 稔)

 

元気にさせてくれる鳥・・・・ヒタキ類 

                                                        
西区 柳場稔

 一年のなかで、9月下旬から10月10日頃、その時期が来るのが楽しみでした。彼らの飛び方は少しばかりの慣れで、スズメやシジュウカラとの違いはわかるようになりました。小さな身体で危険な旅に挑戦するというのに、悲壮感など微塵も感じさせません。まるで生きていることが楽しいと、その軽快な飛ぶ姿は訴えているようにさえ見えます。つまらぬことに一喜一憂しているチッポケな自分にも小さな勇気を与えてくれるんです。

溢れ出す感動・・・・・ブッポウソウ     






                              西区 柳場 稔


     



 30年近く前になるでしょうか。様々な場所に出かけて、いろいろな鳥を見たいという欲求が強かった頃のこと。神奈川支部が編集した”神奈川の野鳥”(ヤマセミの写真の表紙で緑色の・・・)の探鳥地案内のページは当時の私にとって心強い味方となっていました。その日もその本を頼りに目指した場所は津久井湖。目標とする鳥が何だったのか正確な記憶はありませんが、未知の鳥と場所を目指して車を走らせていたのは確かでした。休憩を兼ねて城山ダム脇の駐車場に車を止め、ダム下流側を見下ろす展望台へ。ダム周辺には何故かドバトが多く、一瞬ヤマセミ?かと期待するものの、現実は残念なものでした。そんなとき何気なくダム壁面の小さな排水口を見ていたら一羽の鳥が飛び出すのを発見。双眼鏡で捉えると、それは紛れもないブッポウソウ。もちろん初見です。図鑑等で見た翼の大きな斑紋が白ではなく、水色だということも初めて知りました。運良くそのまま近くの電線にとまってくれたので、その姿を望遠鏡でジックリ見ることもでき、美しい羽色も堪能することができましたが、まさか自分でもこんなに興奮するものなのかという状態で、近くにいた人をつかまえて望遠鏡を覗かせようとする気持ちを何とか堪えていました。ブッポウソウを順光でジックリ観察したのも、こんなに鳥で興奮したのも、後にも先にもこの時だけで、おまけに下流側から湖方面に飛び去る”ホンモノ”のヤマセミまでもこの場所で見ることができるという幸運な一日でした。




鳥それぞれに物語


 ずっと、ずっと昔のことですが、自分が見てきた鳥のひとつひとつに、いつの頃、どこで、誰と一緒に、どんな出会いをしてきたか、大事な思い出として刻みつけていたい。50種だったら、50の、300種だったら300の自分だけの物語を持つことが出来たら、それは誇りにすべき財産ではないかと。そんなことを想っていました。

 最近、鳥見に出かけると、私も含め、デジカメを下げた人を多く見かけるようになりました。デジカメ自体、とても便利な道具なのですが、以前に比べると鳥との出会い、それに纏わる人や場所との出会い等、心に刻みつけることが下手になっているのではないかと考えたりします。そんな時、昔考えていた事をふと思い出していました。想い出は年月の経過とともに美化され、現実とは違ったものに変わっていくものなのかもしれませんが、ファインダーのサイズには決して収まることのない、形のない宝ものではないかと私は考えます。
 このコーナーは、物語のひとつひとつを記憶を辿りながら、紹介していくものですが、きっと私以外にも鳥に纏わる”とっておきの話”をお持ちの方がいらっしゃるのではないかと思います。この趣旨に賛同されてくれる方には、是非投稿をお願いできればと思います。形式には特にこだわりません。

                                              (神奈川支部 柳場 稔)

 
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