2013年10月8日火曜日

橋の上で・・・・・ アマツバメ

                                                                        

鳥たちとの出会いは、探鳥会など双眼鏡を持っている時ばかりとは限りません。野外だけではなく、室内にいる時さえ鳥の声がすると思わず聞き入ってしまうことも・・・・・鳥に一旦興味を持ってしまうと、声や姿が、目や耳に入って来るたびに反応してしまうものですね。
 私の鳥仲間・・・・大先輩なのですが、映画を見ることが趣味の方がいらして、なるほど映画が上映されている間は、この”職業病”からは開放されるのだと勝手に感心したものでした。もっともヒッチコックの”鳥”を見たときは登場したカモメの種類を識別していたとか・・・・・・

 多摩川に丸子橋という橋があります。確か得意先の工場がある川崎側から東京側にある勤め先の会社に戻るときで、車の流れは信号待ちで止まっていたのか、ゆっくり流れていたのだと記憶しています。フロントガラスの向こう側を横断していく鳥の群れを見ました。おそらく季節は秋。渡りのシーズンだったのだと思います。幸運だったのは、かなりの近距離で見ることができたこと。何しろ、下面の縞模様が肉眼で確認できたほど、かなり印象的でした。おそらくアマツバメをこれほどの至近距離で見る機会などそれほど無いことです。

 最近では車を運転する機会も殆どありませんが、運転中に鳥を見てしまうことは安全上程々にしたいものです。

(西区 柳場 稔)

2013年9月8日日曜日

銀杏の隠れ蓑・・・・・コムクドリ

 早いもので、私が消化器系の疾患で一回目の長期入院をしてから10年以上の時が流れてしまいました。
 入院が長引くということで、病棟の婦長さんが気を利かせてくれ、ベッドを一番窓に近い場所にしてくれました。窓に近いことは外の景色が見えるという利点だけでなく、時折訪れる小鳥たちの声を私に届けてくれました。
 もちろん病院の周囲は探鳥地ではありませんから、特別珍しい鳥が見られることはありません。それでもワクワクさせてくれる鳥の訪問はいくつかあったように記憶しています。コムクドリもそんな鳥のひとつでした。
 彼らは決まって夕方群れで現れ、ひとしきり休息した後、何処かへと去って行きました。彼らについて、ひとつ感心したことは、休息の場所に銀杏の樹を選ぶということです。観察する私からすれば残念なことですが、一旦銀杏の枝の間に潜りこむと、銀杏の葉は彼らを巧みに隠してしまいます。
 彼らが銀杏の樹を休息の場に選ぶのは、彼らの知恵だったのか、ただ偶然そこにあったからだったのか、本当のところは分かりません。(西区 柳場 稔)


2013年1月4日金曜日

久則さんのお年玉・・・・・オオコノハズク


 原宿駅前に積雲画廊という小さなギャラリーがあります。もう随分昔のことですが、その年の正月は漫画家岩本久則氏の個展があったので、チョッと覗きに足を運んでみました。期待はしていなかったのですが、幸運にもちょうど画廊に顔を出した久則さんにお会いすることができ、予想だにしていなかった貴重な鳥情報をいただきました。「新宿御苑のオオコノハズクは見てきたの?」「えっ、知りません」こんなやりとりだったと記憶しています。もちろん双眼鏡も持参していなかったのですが、「きっと誰かが見に来ているから、覗かせてもらいなさい」久則さんは、わざわざ封筒の裏にオオコノハズクがいるという樹の場所までの地図を書いて下さいました。

 現地に到着すると、スコープでオオコノハズクを観察されている方が一名・・・・だったような。このレベルの鳥の出現にしては随分静かな状態です。近年のようにネット環境が発達していないのが幸いしたのでしょう。

 当のオオコノハズクといえば、やはり夜行性の鳥だけあって、木の洞のなかで時折薄目を開ける程度、眼の色を確認するのもやっとでした。

 鳥との出会いが人との出会いと関連した思い出になっているということは、何と幸せなことでしょうか。 その日の久則さんの作品の記憶が今では殆ど無いというのは内緒ですが・・・ (西区 柳場 稔)

 

元気にさせてくれる鳥・・・・ヒタキ類 

                                                        
西区 柳場稔

 一年のなかで、9月下旬から10月10日頃、その時期が来るのが楽しみでした。彼らの飛び方は少しばかりの慣れで、スズメやシジュウカラとの違いはわかるようになりました。小さな身体で危険な旅に挑戦するというのに、悲壮感など微塵も感じさせません。まるで生きていることが楽しいと、その軽快な飛ぶ姿は訴えているようにさえ見えます。つまらぬことに一喜一憂しているチッポケな自分にも小さな勇気を与えてくれるんです。

溢れ出す感動・・・・・ブッポウソウ     






                              西区 柳場 稔


     



 30年近く前になるでしょうか。様々な場所に出かけて、いろいろな鳥を見たいという欲求が強かった頃のこと。神奈川支部が編集した”神奈川の野鳥”(ヤマセミの写真の表紙で緑色の・・・)の探鳥地案内のページは当時の私にとって心強い味方となっていました。その日もその本を頼りに目指した場所は津久井湖。目標とする鳥が何だったのか正確な記憶はありませんが、未知の鳥と場所を目指して車を走らせていたのは確かでした。休憩を兼ねて城山ダム脇の駐車場に車を止め、ダム下流側を見下ろす展望台へ。ダム周辺には何故かドバトが多く、一瞬ヤマセミ?かと期待するものの、現実は残念なものでした。そんなとき何気なくダム壁面の小さな排水口を見ていたら一羽の鳥が飛び出すのを発見。双眼鏡で捉えると、それは紛れもないブッポウソウ。もちろん初見です。図鑑等で見た翼の大きな斑紋が白ではなく、水色だということも初めて知りました。運良くそのまま近くの電線にとまってくれたので、その姿を望遠鏡でジックリ見ることもでき、美しい羽色も堪能することができましたが、まさか自分でもこんなに興奮するものなのかという状態で、近くにいた人をつかまえて望遠鏡を覗かせようとする気持ちを何とか堪えていました。ブッポウソウを順光でジックリ観察したのも、こんなに鳥で興奮したのも、後にも先にもこの時だけで、おまけに下流側から湖方面に飛び去る”ホンモノ”のヤマセミまでもこの場所で見ることができるという幸運な一日でした。




鳥それぞれに物語


 ずっと、ずっと昔のことですが、自分が見てきた鳥のひとつひとつに、いつの頃、どこで、誰と一緒に、どんな出会いをしてきたか、大事な思い出として刻みつけていたい。50種だったら、50の、300種だったら300の自分だけの物語を持つことが出来たら、それは誇りにすべき財産ではないかと。そんなことを想っていました。

 最近、鳥見に出かけると、私も含め、デジカメを下げた人を多く見かけるようになりました。デジカメ自体、とても便利な道具なのですが、以前に比べると鳥との出会い、それに纏わる人や場所との出会い等、心に刻みつけることが下手になっているのではないかと考えたりします。そんな時、昔考えていた事をふと思い出していました。想い出は年月の経過とともに美化され、現実とは違ったものに変わっていくものなのかもしれませんが、ファインダーのサイズには決して収まることのない、形のない宝ものではないかと私は考えます。
 このコーナーは、物語のひとつひとつを記憶を辿りながら、紹介していくものですが、きっと私以外にも鳥に纏わる”とっておきの話”をお持ちの方がいらっしゃるのではないかと思います。この趣旨に賛同されてくれる方には、是非投稿をお願いできればと思います。形式には特にこだわりません。

                                              (神奈川支部 柳場 稔)

 
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